前回は虫歯菌として知られるミュータンス菌が脳卒中の危険因子になるかも、というお話でしたが、歯周病の原因菌の一つと言われるPrevotella intermedia(以下Pi菌)は動脈硬化から脳梗塞のリスクを上げるという報告があります。
歯周病菌感染症がアテローム動脈硬化(プラークと呼ばれるものが血管壁に作られる特徴を示す動脈硬化)に関与しているという事が報告されています。
先ほどのPi菌に対する抗体価(血液検査より)アテローム動脈硬化を伴う脳梗塞において高値となる、つまりこの菌の感染が頚動脈の動脈硬化をきたし、その結果として脳梗塞が生じる可能性があるということです。
別の歯周病原因菌として知られるPorphyromonas gingivitis(以下Pg菌)
はアルツハイマー病との関連があることが分かってきていますが、この菌に対する抗体価の上昇が心房細動と関連があることも報告されており、心房細動は脳梗塞の重大なリスク因子でもあるのです。
抜歯によりその直後(1分半〜5分後)には沢山の細菌が血液中に入ってしまう菌血症という状態になるというデータがあります。
前回のコラムでも触れた様に、歯磨きでも軽度な菌血症が生じますが、通常は免疫力で排除されますが、免疫力の低下や血管がもろくなっていればその菌が出血や動脈硬化に繋がるかもしれないということです。
現段階でははっきりとその効果が実証されているわけではありませんが、脳卒中に対してもしっかり虫歯や歯周病の治療をし、口腔ケアをきちんと行うことが大変重要だと考えられます。
Circulation. 2008 Jun 17;117(24):3118-25.
https://neurosciencenews.com/ich-stroke-oral-bacteria-neurology-3676/
Hosomi N, et al:Cerebrovasc Dis. 2012;34(5-6): 385-92.